建築家がつくる理想のマンション―住みごこちのよさとは何か (講談社プラスアルファ新書)



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住む人にとっての理想の集合住宅とは?

 一般に、『マンション』というと、『集合住宅』のことを指します。

 『マンションの管理の適正化の推進に関する法律』や『マンションの建替えの円滑化等に関する法律』といった法律では、『マンション』とは、2以上の区分所有者のいる、人が住むための専有部分のある建物、と規定されています。つまり、『区分所有建物』であり、『集合住宅』であるものを指します。いわゆる『分譲マンション』のことです。

 そして、本書の『マンション』は、『集合住宅』ではありますが、『区分所有建物ではない』ものを指しています。オーナー(所有者)が1人の、いわゆる『賃貸マンション』あるいは『アパート』のことです。
 本書の前半では、住む人にとっての理想のマンションとは何か、世界各地の古い集落から、その答えを探しています。

 人が集まって住むことの意味、利点、どういう形態が望ましいのか。マンションも、集落のようであるべきだ、私もそう思いました。
 後半は、著者がこれまでに建ててきた、3つのマンションの紹介です。
 なるほど。確かに、住んでみたい、そう思えるマンションばかりです。でもやはり、『賃貸』であることが気になります。

 著者は、分譲マンションとして、そういう(理想の)マンションを建てるのは『無理だ』とあきらめているようですが、ぜひ分譲マンションも建てて欲しいと思いました。
とても魅力的です。が、

建築好きの人なら知っているあの泰山館を建てた建築家、泉幸甫さんの本です。対象がアパートメントや、マンションなので、個人には関係ない世界だと思われる方もいらっしゃると思いますが、基本的に戸建住宅の集合体としての集合住宅という考え方なので、個人の住宅について考えていらっしゃる方にも十分に、参考になり、うん。うん。うん。と、頷ける内容だとおもいます。勿論、アパートメント、マンションに関するその思想性も十分に共感を得られるものです。

ただ有能な建築家が、同時に優れた物書きでもあるとは言い切れず・・・ 著者の建築での仕事ぶりをみて、「生物を育てるような方法だ」と、言った人がいた。というエピソードがこの本の中に書かれているのですが、・・・ そういう視線と表現力を持った人によってもう少し客観的に書かれていたら、素晴らしいだけでなく、もっと素敵な建築本となっていたような気がしました。



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