食べ物が語る香港史



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パイナップルパンとはナニモノか


2006年春、日本で公開された香港映画に
「マクダル・パイナップルパン王子」という映画があった。
劇中、日本のメロンパンのようなパンが出てくるのだが、
それがどうしてパイナップルパンと呼ばれるのか
そしてどんな味がするのか、皆目判らないでいた。

そんな疑問に答えてくれたのが本書である。
それだけではなく、食物という特殊な切り口から
複雑きわまる香港史の流れを、社会史とはまた一味違った観点で
上手く(旨く)説明していく手腕には感心させられた。

結局パイナップルパンとはどういうものなのか
どんな味がするのかは、是非実際に本書を手に取って
お確かめいただきたい。

香港ファン必見!食を通しての香港の歴史の一冊♪

この本を一度手放して「アイヤー!失敗!」とユーズドで買い戻して「大正解☆」でした。香港の名前の由来「船上生活人の「蛋家人(ダンカーヤン)」の言葉だから『ホンコン』のはず。でなければ広東語の発音は『ヒョンコン』になっていると思う」などなど・・・言葉から中国民族の歴史、大陸から香港へ移住してきた方々の歴史、植民地として支配したイギリスから食だけは逆に「イギリスを呑込ん」でしまった!たくましくしたたか、かつ、やはり食に対するこだわりが激しく強い中国。イギリス、インド、タイ・・・・そして私の日本が交差している、限りない魅力の微笑を食の楽しさと一緒に送ってくれるこの本は、素晴らしい一冊です。

私にとっての圧巻は「中国共産党へのシニカルなメニュー」(これは一読の価値あり!値千金とはこのことだと思いました。)「香港の返還」時のメニューが何故フランス式なのか?・・・そして最後「ホンコン・チャイニーズ」の誇りを持ち始めたホンコンの方々が「香港・我的家」の章は、とてつもない迫力で私の心にせまってきました。

平野久美子氏の洞察力、描写力、そしてたくさんの写真、図版・・・なにより美味しそうな食の文章が素晴らしいとおもいます。一冊に香港の魅力がまるごと凝縮されている稀有なお勧めの一冊です。



新潮社