グルメの蘊蓄 紅山氏の『ものしり紀行』シリーズの1冊。
本書は、『ヨーロッパが面白い』(上・下巻,トラベルジャーナル,1991年)を再構成・4分冊で文庫化したもの。
著者は海外旅行の同行講師を務めた人物で、驚くほど博識。ヨーロッパの暮らし、文化、歴史などに精通している。それをわかりやすくまとめてくれたのが本書。
「くらしとグルメ」編と銘打たれているように、オリーブ、チーズ、ワイン、水道、温泉、ジプシーなどが紹介されている。しかし、これがただの紹介ではない。歴史、民俗、社会構造などから説き起こし、どうしてこの地域でこういう食べ物がつくられているのか、この土地のこの風習は何に起源があるのか、といったことを、実に面白く語ってくれるのである。知識の深さ、ヨーロッパ文化への理解。並の人ではないと感じた。
ヨーロッパ旅行の前に読んでおくと、旅がはるかに面白くなるだろう。また、読み物としても非常に上質。
ちょっと面白い話 ビールがどのようにできたか、ワインの注文に失敗しない方法、コニャックの歴史やヨーロッパのレスランの定食の話。都市城塞、北欧の氷河地形の話などなど多岐にわたるちょっと面白い話が満載。旅行前に読んでおけばガイドブックにはない知識も興味も広がり、旅行を楽しくしてくれそうな実用的な物知り知識本です。もちろん旅行しなくても写真や図入りで楽しめます。博識なおじ様にちょっと案内してもらってる雰囲気の本です。
リンゴ・ジュースの素晴らしさを教える本 ヨーロッパのくらしとグルメに関する雑学本です。 スイスの美しい風景は、悪草抜きなど普段の手入れが欠かせない、 という文章のあとの説明がgoodです。-------------------------------------------------------------- 以前にドイツ人が、別荘代わりに チロルの農家を買いあさったことがあった。 彼らはときどき遊びにくるだけで、 まわりの牧草地の手入れをしないものだから、 たちまち牧草地が荒れて見苦しくなった。 おまけに悪草がはびこり放題になり、 広く周辺にも種が飛んで、大迷惑を及ぼした。 そのためオーストリア政府は、 外国人がこのように農家・農地を買い取ることを禁止するに至った。(p.17) -------------------------------------------------------------- 次のリンゴ・ジュースの話は、ぜひ飲んでみたくなります。 -------------------------------------------------------------- ドイツ、オーストリア、スイスのドイツ語圏では よくリンゴ・ジュース(ドイツ語でアプフェルザフト)を飲む。 爽快な感じで、ノドをうるおすのによく、 また甘みも酸味もそれほど強くないため、 食事のときに飲んでも料理の味をあまりそこなわない。 日本人旅行者の女性がヨーロッパで最もよくとる飲み物は、 一位オレンジ・ジュース、二位コーラだが、 いったんリンゴ・ジュースの素晴らしさを覚えると、 リンゴ・ジュース党に鞍替えする人がたいへん多い。 リンゴ・ジュースは日本でも発売されているのだが、 その魅力に気づいている人はまだ少ないようだ。(pp.75) --------------------------------------------------------------
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